ガリバー(IDOM)の最新決算と今後の展望 — 小売シフトで「販売NO.1」を狙う戦略

中古車業界の大手、ガリバー(運営:株式会社IDOM)はここ数年で事業モデルを大きく変えています。

かつては「買取→オークション売却」でスピード勝負のビジネスでしたが、近年は自社店舗での直接販売(小売)に注力し、安定した収益化と顧客接点の拡大を図っています。

この記事では、直近の決算ハイライトと現状のサービス展開、そして今後注目すべきポイントをわかりやすくまとめます。


決算ハイライト(2026年2月期 第1四半期)

  • 売上高:1,385.32億円(前年同期比 +11.2%)
    過去最高水準の売上を達成しました。
  • 営業利益:39億円(前年同期比 –12.3%)
    販管費や出店コストの増加が重荷となり、減益に。
  • 経常利益:35.82億円(前年同期比 –17.0%)
    営業外費用もあり、利益面では慎重な展開。
  • 親会社株主に帰属する純利益:22.78億円(前年同期比 –21.5%)
    利益水準は抑えられる結果に。
  • 国内直営店 小売台数:43,840台(前年同期比 +12.9%)
    小売台数は順調に拡大し、売上の原動力となっています。

小売台数の推移(表)

決算期小売台数(台)前年比1台あたり粗利(万円)
2023年2月期135,139約40
2024年2月期144,487+7%約41
2025年2月期(Q1累計)38,139+3%(対前年同期)約41

(数値はIDOM決算説明会資料より作成)


なぜ業績が安定しているのか — 小売モデル転換の効果

買取→自社販売で利益率改善

以前は買取後にオークションへ流す流通が多く、1台当たりの利益が薄まりがちでした。ガリバーは買い取った良質車を自社の販売チャネルで直接売ることで、1台あたりの利益を押し上げる構造に転換しています。結果として小売台数の増加が売上・利益の安定に直結しています。

カテゴリ特化店舗で需給を最適化

輸入車(LIBERALA)、軽自動車(ガリバーミニクル)、ファミリー向け(SNAP HOUSE)、SUV(Brat)といったカテゴリ別の専門店ネットワークを活用し、各顧客セグメントに合った在庫確保と販売を実現しています。これにより、輸入車やハイグレード車も適切に評価・販売できる体制が整っています。

◆カテゴリ特化店舗一覧


店舗戦略と投資

大型店舗の出店と改装

集客を意識した店舗設計(展示動線の最適化、ラウンジや整備工場の併設など)で来店体験を高め、展示車の回転率を上げる方針です。2025年期も大型店の新規オープンが続いています。

人的資本とDXへの投資

現場の販売力強化(スタッフ教育)とデジタルでの顧客体験向上(検索・在庫管理・CRMの高度化)に資源を投下しています。これが中長期の競争力につながる見込みです。


新サービスと事業の多様化

NOREL(サブスク)

月額制でクルマを利用できるサブスクサービス。中古・新車両プランを含め、利用者ニーズに応えるラインナップを持っています。サブスクは保有台数や物流を活かした展開が可能で、将来的に収益の柱になり得ます。

NOREL(ノレル)-みんなのマイ・カーライフ・サブスク+1

ガリバーフリマ(個人間仲介)などの新試み

個人間売買の仲介や、保有在庫を活かしたカーシェアリングなど実証的なサービスも展開/検討しており、既存の在庫・販売ネットワークを活用する多角化が進んでいます(※サービスの継続性・仕様は時期によって更新されるため要確認)。

~#IDOMの中で働くひと VOL20~


リスクと注目点(現場目線)

中古車相場の変動

オークション相場や中古車市況が下振れすると、仕入れ・粗利に影響します。実際、IDOMも市況の影響を注視しており、粗利維持のための在庫・仕入れ管理が重要です。

出店投資と採算

大型店や整備工場の出店は集客を増やしますが、立地・固定費とのバランスで回収に時間がかかる場合もあります。出店戦略の採算性は継続注視ポイントです。

新サービスの採算化

NORELなどのサブスクやカーシェアは将来性が高い一方で、運用コスト(保管・整備・物流)をどう最適化するかが重要です。

NOREL(ノレル)-みんなのマイ・カーライフ・サブスク


まとめ(結論)

ガリバーは「買取力」を武器に、在庫を自社で売る小売重視モデルへ転換し、実績として小売台数・台粗利ともに改善させてきました。

業績が安定したことで現在は出店・人材・DXへ投資フェーズに入り、店舗体験の改善や多様なモビリティサービス(サブスク・個人売買仲介・カーシェア等)で顧客接点を広げようとしています。

短期的には中古車市況の変動がリスクですが、ネットワークと在庫を活かした事業構造は中長期で強みになる可能性が高いです。


参考(主に参照した公式資料)

  • IDOM 2024年2月期 決算説明会資料(FY2024ハイライト:小売台数144,487台、台粗利41万円等)。IDOM
  • IDOM 2025年2月期 決算説明会資料(2025 Q4 / 出店・投資の方針、2025年の新規大型店オープン情報)。IDOM
  • IDOM(英語)「Summary of Recent Financial Results」(2025年度第1四半期の小売台数等)。IDOM
  • IDOM リリース(Results for Fiscal Year Ended February 28, 2025 発表)/IRページ。IDOM
  • NOREL(ノレル)公式サイト(サブスク事業の概要)。NOREL(ノレル)-みんなのマイ・カーライフ・サブスク